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2010.05.19

シアター!

 冒頭、いじめで生き続けるのがやっとだった"巧"少年が演劇に生き甲斐を見つける。というところから物語が始まります。それから時は経ち、少年は青年から中年に差し掛かった頃に話は飛びます。自分の劇団を立ち上げ、そこそこ順調に興行を続けていた弟の巧から、幼い頃からしっかり者で、いつも弟を助けていた兄"司"、今ではバリバリと仕事をこなす彼に助けを求める連絡が入ります。自分の劇団が潰れそうだから300万貸してくれと。事の発端は巧の主催する劇団に名の売れた声優の"千歳"が入団した事。これまで人との衝突を嫌い、当たり障りの無い脚本を書いてきた巧でしたが、千歳の可能性を見て本気で書く事を決意します。それをきっかけに団員の半数以上の脱退と、300万の借金だけが残ったというのです。売れない役者として人生を棒に振った父親を持つ兄弟だけに、兄としては弟を更生させたいと思っており、300万を貸す代わりに条件を突きつけます。演劇だけの収入で2年間で返済して見せろ。出来なければ劇団をたため。その代わり経理は俺がやると。これまで楽しい演劇が出来ればいいと思っていた劇団員達が収益を出せる劇団を目指して本気で演劇に取り組む2年間が始まります。

 と、いう訳で演劇のお話です。私が応援している真田アサミさんがここ数年、客演を転々としているということもあり、お芝居を観に行く機会が多くなりました。そういったことも手伝ってとても興味深く楽しませてもらいました。まず、読み進めていくうちに声優である千歳の入団の件がある訳ですが、やはり最初に思い描いたのは声優ということで真田アサミさんを連想しました。しかし、物語上では劇団員であるが為に思い悩み、時に嬉しさを共有するというのが深い部分にあったので、アサミさんを足掛かりに読むことは出来ても、客演と劇団員では全く違うものなのだなと改めて感じました。そして、チラシ作成あたりの件まで読み進んだ時にフラッシュバックしたのは沢城みゆきさんでした。以前、ヘロヘロQの公演で始めて沢城さんのお芝居を拝見しに行った時に入っていたTheatre劇団子のチラシを見て、「ほぉ、みゆきちゃん入団したんだ。本当に芝居に対してどこまでも本気な子だな。」と感じ、機会があれば観に行きたいなと感じたことを思い出しました。まさに客演ではない、自分の所属する劇団とした時のその姿を今作に照らし合わせてみるととてもしっくり来るのです。そして巻末をみてビックリ!なんと協力にTheatre劇団子の名前があるではないですか!しかもあとがきでは有川浩さん自らが図書館戦争の繋がりで沢城みゆきさんの芝居を観に行き、モチーフにさせてもらったとも。いやぁ世間は狭いといいますが、なかなか面白い体験でした。w
 舞台裏というのはそうそう見る機会は無く、学生の文化祭等ならまだしもプロの舞台裏というのは全く知りません。今回のお話では特に経理や管理に目を向けた作品である為、各スタッフがどういう仕事を担当するのか?何処にどういうお金が必要なのか?等など色々と面白く読めました。勿論娯楽作品としてのお話なので、全部が全部この通りだとは思いませんが、そう大きくは違わないのではないかと思えました。そういった面でも面白く読むことが出来ました。
 そしてなにより登場人物が魅力的で、特に看板女優の牧子がカッコイイのです!自分が何度言っても変えられなかった巧の意識を入団しただけで変えさせてしまった千歳に嫉妬するのですが、その方向を千歳にではなく芝居に向けるのです!千歳が目指して追いかけ続けるような女優になると!千歳を追いかける巧から千歳を奪ってやるとwマイナスをプラスに転換するその姿勢は見習いたいですね。司に関しては言わずもがなです。当たり前の台詞なのですが、その時その人に発せられる言葉が適切で実にカッコイイのです。そして一番の見所だと感じているのは千歳とそれぞれの距離です。千歳と司の距離、千歳と巧の距離、千歳と牧子の距離、千歳と劇団の距離。それぞれがとても大切に描いているのが感じられます。
 実はこの物語は2年間を描かず、最初の公演だけで終わります。続きが出ても、この巻で終わってしまってもどちらでも問題が無い綺麗な終わり方をしています。私個人としてはむしろここで終わった方が綺麗だと思っているのですが、その反面この魅力的なキャラ達の続きを読んでみたいという思いもあるのです。(^^;さて、どうなるのでしょうね?

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