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2011.10.25

ヴァンダル画廊街の奇跡2

 積読から発掘。特急便ガールの作者なのですが、デビュー作である第16回電撃小説大賞<金賞>を受賞したこの作品。1巻目を読んでそこそこ良い印象を受けながらも2巻、3巻と積んでしまっていたのは何かパンチが足らなかったとでも言いましょうか。逆に特急便ガールを読んでまた読んでみようという気になった次第です。
 今回は全6章からなる一部短編とも受け取れる構成。とはいえ話が切れている訳ではなくこの物語自体がそういう性質を持っているからに他なりません。とても大きな世界大戦の後に発足した世界統一政府が発令した<プロパガンダ撤廃令>により絵、音楽といったあらゆる芸術が検閲を受け、その殆どを世の中から封印するという近未来ファンタジーです。この物語は一度見たものを正確に写実できるという能力(転写眼)を持った少女エナが、とある絵を見たい誰かの為にその絵を街という巨大なキャンバスに引きずり出して描いてしまうという国際的アートテロリストのお話です。冒頭で短編と言ったのはこの行為を世界中のいたる所で無差別に行っている為、場所や対象の人が変わればその絵を描き出す理由も1から紡ぎ直す必要があります。それを一冊の中で数回行う訳です。ただ、これらの行為には両親の手がかりを探すという目的があり、これらの行為を経ることで一歩一歩目的に向かっていくというストーリーなのです。恐らく最終的にこの悪法とも思える法の真理に辿り着くのではないかな?と思われるのですが、果たしてどうなるのでしょうか?

 今回はスイスで「風の花嫁(テンペスト)」を描く時計屋のお話。ロンドンで「オフィーリア」を描く九十七鍵盤のピアノの話。日本で「雲龍図」を背中に背負った刺青師の話。ワシントンで「大いなる赤き竜と日をまとう女」を反政府組織DESTによって描かれる話の主に4本です。そこに序章である「真珠の耳飾の女」と、終章である「アンノウン」を加えた計6章となります。
 そんな中で今回異質だったのが2編目のオフィーリアでしょうか。いつもならイーゼルを背負った少女エナが適当に街をぶらついて関わった人の心から求めている絵を描き出すという構成で展開されるのですが、この回はエナの相棒である半身が機械の大男ハルクの未だ全身が生身であった頃の淡い恋話です。この回に限ってはエナの描いたオフィーリアは物語の最後に花を添えただけというものでしたが、4編中で非常に良いアクセントとなり印象に残る話でした。そしてこの後に続く3章、4章、終章ではエナはプロパガンダに関する絵を一切描きません。エナ達ヴァンダル以外の組織が動き出すからです。そして物語自体が一気に動き出します。冒頭で積読から発掘したと言っていますが、実はこの物語は次の3巻目で終わりを迎える事を既に知っている状態で読み始めています。残り1巻でどのように話を纏めるのか?物語の行き着く先は?それらを楽しみにしつつ・・・。

<脳内キャスト>
エナ:植田佳奈
ハルク:石塚運昇
ネーヴォ:野島昭生

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