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2012.06.13

ドラフィル ~竜ヶ坂商店街オーケストラの英雄~

 音大を微妙な成績で卒業したバイオリニストである響介がこのお話の主人公。父親の期待に応えられず、勘当を言い渡され、それでもプロオケ入団を目指すが書類先行で落とされる日々が続いていた。そんな彼が音楽を辞めずに続けている理由、それは幼少の頃に父と見に行ったコンクールであまりにも自由にそして楽しそうに演奏する一人の少女を観て心の目標にしてきたからに他ならない。そんなある日、楽器商を営む叔父からアマオケのコンマスをやらないかというオファーがくる。職も無く、防音設備の整ったマンションからも追い出され、公民館の雇い口もあるとのことで仕方なく引き受ける響介。そこで傍若無人ながらもとてつもない才能を感じる車椅子の指揮者に出会う。果たしてドラフィルの行方は?

 てな感じのお話なのですが、知らない世界のお話というのは読んでいて楽しいですね。コントラバスの位置取り(床の状態)で音が変わるなんて知りませんでした。確かに考えてみれば納得がいく話なのですが、考えた事もなかった話なだけに逐一目から鱗です。流石に楽器全部に対しての講釈は無かったですが、物語上、高齢のトランペット主席が孫へ座を譲るエピソードでは皇帝の楽器と称され、何よりもいかなる時でも吹きぬく度胸が無ければ勤まらない等、のだめカンタービレ程度の知識しかない私でも楽しく読めました。特に惹かれたのが車椅子の指揮者七緒によって「弾かされた」ブラコンの件はゾクゾク感と共に野崎まどの[映]アムリタで台本に読まされたあの感覚を彷彿とさせました。

 全体的にはオケのメンバーが抱える悩みを七緒と一緒に解決していき、結果一つの音を作っていくという内容なのですが、この七緒がまた曲者で、メンバーの問題を熟知していながらも決して自分では手を差し伸べない。それで居て響介を差し向けるのです。そして最後には七緒自身と、響介自身にも大きく関わることに・・・正に全てが七緒のシナリオだったかのように。

 最近のライトノベルと称される作品が尽く厨二過ぎてかなり辟易。厨二ノベルとジャンルを改めた方がいいのでは?と思えるほどです。そんな中で台頭してきたのがこのメディアワークス文庫です。

 今回のこのドラフィルも文章が読みやすく、親しみやすいだけではなく、専門知識がちりばめられていたりと読んでいて楽しい。そして何より読んでいてワクワクさせる展開や、時折見せる美しい文章。そして常識をはみ出さない日常。

 さて、そうなると気になるのが作者ですが、驚いた事に「ヴァンダル画廊の奇跡」、「特急便ガール」とこれまでの作品を全て読んだ事のある作者でした。今回、タイトルで購入した作品なのですが、この作者とはタイトルのセンスが合うようです。

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