« 2012年6月 | トップページ | 2012年8月 »

2012年7月

2012.07.28

【小説】おおかみこどもの雨と雪

 映画を見るまでは読まないと封印していた角川文庫版の「おおかみこどもの雨と雪」ですが、やっと読み終わりました。まず先日も書いた通り、状況説明はまんま映画のシーンを文章に落としているという感じで、だからこそ監督がそのシーンで何を意識して、何を伝えたいのかが一目瞭然となる小説となっています。まるで絵コンテを読んでいる様な感じでわくわくしながら読み進めていきました。

 台詞の少ないこの映画ですが、特に前半の子育てのシーンでは無声で表現されるシーンが多様されており、それでも何を伝えたいのかが映像からしっかりと受け止められるのですが、小説でも基本的な構成は同じで、映像の様に無声でという訳にはいかないのでwそこはしっかりと文章で描かれているのですが、その為より情報量の多いものになっています。その為小説を読んだ事によって気が付く事も多く、より理解を深める事が出来ました。

 また、映像を忠実になぞっている為、映画を見た後ならその映像がまんま浮かんでくる事でしょう。ただ、小説を先に読んだ時にどの様に思うかは既に映像を見てしまっている私にはわからないのですが、個人的には映画の後に読む事をお薦めしたいですね。

 読み終えての感想は映画を見ている時を何ら変わりはなく、同じように感動し、花と一緒に微笑み、泣き、苦しくなり、そして最後にはやっぱり笑うのでした。そして、より理解度を深めたこの状態でもう一度映像を観に行きたいと強く思いました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012.07.24

白衣性恋愛症候群 小説短編集 Summary

 帯に書かれた「そっと秘めた、大切なこと...百合ヶ浜にはいっぱいです!」にひかれて買ってしまいましたw。女性看護師さんのお話で、元はどうやらゲームのようです。看護師という世界も詳しくは知らないのですが、こういった知らない仕事について書かれた話と言うのはとても興味深く、何処までがフィクションなのかはわかりませんが、かなり忠実にその業界の現状における問題点を赤裸々に描いているのだろうなというのは感じられました。そんな病院の内情的な真面目な話があったかと思うと、タイトル通りの百合百合な話も展開するという具合で、特にバレンタインからのホワイトデー話は好みな話でした。かと思うと最後に収録された少々内面的に怖い話も収録されており、緩急があって楽しめました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012.07.23

魔法少女リリカルなのは 2nd A's & おおかみこどもの雨と雪 2回目

 ふと時間が空いたので2回目観てきました。楽しみだったのは「なのは」の方だったのですが、結果的には「おおかみこども」の方が2回目は楽しめました。というか引き付ける力が強かったと言った方がいいでしょうか。

 「なのは」については1回目でかなり満足してしまった所為か、観た感想は1回目、2回目共にあまり変わりませんでした。それだけ直球で絵描かれていたという事でしょう。

 「おおかみこども」の方は1回目は地味な作品だったという印象だったのですが、1回目よりも2回目、2回目よりもこうして感想を書いている今の方が好き度が上がっているというか、じわじわ来てます。とにかく目が離せない映像となっており、「なのは」よりも集中して観ていた気がします。というか引き付けられたのでしょうね。
 現在、映画を観終わるまではと封印していた押田監督自ら執筆した小説を読み始めているのですが、これがまた面白いのです。どう面白いかと言うと話は全く同じですが、設計図をそのまま文章に書き出したというか、むしろ脚本よりはコンテを読んでいるかのような感覚に襲われます。なので無声で流れてしまったシーン等はこの小説によってより深い理解を得られます。また、情景描写は小説的というよりは情景をまんま書き出した印象が強く、映画を見た後だからこそ鮮明に脳裏に再生されますが、映画よりも先に読んだ場合、映画の絵に驚くことになるのではないかと予想されます。どちらが先が面白いのかについては個人的には映画の後の方をお薦めしたいですね。この小説の感想については読み終わった後に改めて書きたいと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012.07.21

おおかみこどもの雨と雪

 今年最も楽しみだったこの作品。やっと公開と相成ったので早速見てきました。場所は新宿バルト9。運良く舞台挨拶の回を普通にオンライン予約から取れたこともあり、ワクワクしながら劇場へ向かいました。

 ここから先はネタバレ必至ですのでご注意下さい。

 「時をかける少女」「サマーウォーズ」と重ねてよりファミリー層へ向けた作品が来た!と思って観た作品は想像を超えたものでした。まず主人公が母親であること。一言で言ってしまえば彼(おおかみおとこ)にであってからの13年間を描いた作品で、おおかみおとことの間に生まれた子供を人間の環境の中でどう育てるかというものでした。例えば出産の時、産婦人科には行けず、病気になった時も然り、また、定期検診も受けられず、受けてないことによる児童所からの自宅訪問等など。人間界で育てていくことの難しさがリアルに語られている作品でした。
 途中、人として、又は狼として、どちらでも好きな生き方を選べるようにと田舎(と言ってもほぼ山の中)へ引越すことになり、大自然の中を駆けまわるという作品中ほぼ唯一といえるエンターテイメント的な描写があったりもするのですが、全体を通してとても地味な作品であるといわざろうえない内容でした。
 誤解のないように言っておきますが、地味なのと好き嫌いは別の話で、私的には見どころ満載でとても好きな作品でした。なのですが、誰に薦めるか?と問われた時になかなか難しいものがあり、強いていうなら「お母さん」「お父さん」と言われている人なのかなと(子供が見れるのかは疑問)。そうすると結局子連れになってしまうので思うような形にならないのですよね。特に台詞の少ないこの作品、子育てのシーン等ではほぼ無声でスピーディーに日々が過ぎていく描写が多く、子供に気を足られて集中できないと楽しめませんし、かといって内容が内容ですから子供をほおっておく訳にも行きませんしw。
 時をかける少女や、サマーウォーズの様に口コミで広がる様な作品ではないなと予想できるのですが、ただ期待作ではあるので初週の人数はそこそこ行くと思うのですがさて、どうなることでしょう?

 今回この作品でとても印象的だったのが主人公である「花」の笑顔です。名前の由来にもなっており、どんなに辛い時でもとりあえず笑っていればどうにかなるという父の言葉を守り続けている行為で、この笑顔が作品中たくさん出てきます。嬉しい時の笑顔はいいのですが、辛いことがあった時の笑顔は笑顔なのに心がえぐられるような思いで泣き顔よりよっぽど辛いのです。それも宮崎あおいさんの演技の魅力とでも言いましょうか。「うん。」の一言にとても多くの情報を込められる役者さんだというのは舞台挨拶の時の細田監督の言葉ですが、実にナチュラルで本業の声優さんとは違った魅力を感じる演技でした。彼女の演技があってこそ「花」という主人公が成り立っていると言っても過言ではないでしょう。
 あとは冒頭の草原での植物のディティールの細かさには度肝を抜かされました。更にこの草原の夢のシーンは数度あるのですが、その度に植物が変わっており、植物の種類で季節を表しているのが分かります。
 雪と雨の進む道の描き方も印象的でした。特に学校のシーン。学年毎の教室をスライドさせるだけの演出なのですが、それだけで3年間の雪と雨の成長を見事に描いたあの演出はとてもおもしろく感じました。また、個人的には雪と草平の出会いですかね。草平が良い奴でほんと良かった!
 先ほども話題に出しましたが、この作品はとにかく台詞が少ないです。おおかみおとこが無口であることから始まり、子育てのシーンでは無声で日々が流れていくという描き方をしています。しかも日常会話だけで、ドラマティックな台詞回しなど一切ありません。だからなのですかね、例え言葉を尽くさなくても、花や、雪や、雨の行動やしぐさそのものに心打たれます。

 舞台挨拶は細田守監督とのティーチイン形式というキャスト主体の舞台挨拶ではなかなか無い舞台挨拶でした。細田監督は一言の質問に対してかなりの情報量の回答を返す方で、一人に対して短くても5,6分くらいは話していたように思います。どれも興味深い質問に対して真剣に回答を返す監督が印象的した。オーディオコメンタリーとかもそうなのですが、好きな作品のコメンタリーはスタッフ側の話が聞きたかったりするのですよね。そういう意味では公開初日から監督の生の言葉が聞けた今回の舞台挨拶は非常に貴重なものでした。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012.07.18

ソードアート・オンライン10 アリシゼーション・ランニング

 前回が一編丸々新章だったのですっかり忘れていましたが、キリト死にそうだったんですよね・・・。丸々1巻越しに思い出しました。前回が現実世界を遮断して丸々ゲーム内で終えた意図が閉じ込められた感を出すためだったのではないかといまさら気がついた感じです。そして残された側のリアルでの捜索で始まった今回の冒頭を読んでやっとそのことに気がついたといったところでしょうか。今度は丸々一冊リアルか?とw思われたキリトの捜索ですが、意外にあっさりと発見し対面。場所を突き止める際のアスナ、リーファ、シノンの三者会議は真に迫ってドキドキしながら読んでましたが、それから場所が特定できてからのアプローチがめちゃくちゃあっさりし過ぎていて多少拍子抜けしましたが、アスナ登場の意外性は有りだと思いました。そして正体を現す黒幕の菊岡三佐wもう少し悪役ぶっている時間が長くても良かったかなと思います。(それとも最後にどんでん返しが?)そこはアスナが本拠地にあっさり乗り込んでしまった事にも起因するのですが。それでも一冊の半分をリアル側としたのは賞賛です。(個人的には一冊でもよかったw)

 このリアルの状況消化によりアンダー・ワールド内での状況をかなり理解して読めるようになります。とりあえず、彼らに与えた権限の内、寿命の制御は不味いでしょ。天命の永久凍結とか出来てしまったら人と価値観変わるのは至極当然です。ってのをリアルの状況を理解して、アンダー・ワールドに話が移って数ページで思いましたwww。この辺の構成も意図的なのでしょうね。

 印象に残ったのはアスナとキリトの娘としての存在であるAIのユイが自分のコピーという存在への恐怖をアスナに語っていた件ですかね。実際にユイ程のAIは未だ世の中には実在していませんが、なんかリアリティのある言葉でした。

 あとどうしても今回のソウルトランスレーターの存在が別作品のアクセルワールドにリンクしている気がしてなりません。作者自身は以前否定していましたが、このマシンがブレインバーストプログラムに関係しているとしか思えません。また、今回大脳の代わりとなるキューブが出てきました。きっとこの発展版がニューロリンカーに記憶素子として使われているのではないか?そうすればこの前のキリトとシルバークロウとの邂逅の説明がつく気がするのです。というのも今回の実験でキリトの実験データの一部がこれからキューブの原型を形作る一部となるのではないか?そうすればキリトの魂の一部は未来にもあり、更にニューロリンカー又はブレインバーストプログラムがソウルトランスレーターを元にした結果であればそういうのもありかなと。あとはアッシュローラーの件が一番わかりやすいでしょうか。兄の人格がまるまる何処かに(ニューロリンカー又はサーバーか?)残っている現象。その他にも記憶の残滓的なものは今回のテクノロジーを元にした結果ではないかと推測してしまいます。

 と、話が脱線しましたが、とりあえず今回の全半の話を読んでの感想は、AIを兵士に、それって敵と見方の区別はどうするの?自分の意思で暴走始めたら(意志的にだから暴走じゃないのですがw)怖くね?そしてそれらに基づいた今回の終わり予想。AIたちにラースが乗っ取られるwそして教訓にしてプロジェクト凍結とか。さて、実際はどうなることやら。

 アンダーワールド内のキリトですが、結構冷静に現状を把握している様です。ソウルトランスレーターの倍率までも想定内とは恐れ入ります。
 今回は剣術大会に出て、士官学校的な場所での学生生活がメインの話です。世界観的に死の危険性は少ないのでその点においてのハラハラ感は無いものの、加速された体感時間での長期スパンでの物語構築が可能な今回のシリーズは、今まではとやはり雰囲気が違うのが感じ取れます。今後リアルとアンダーワールドの関わりや、人外が支配する北の大地がどう物語に関わってくるのかが気になるところです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012.07.14

魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A's

 本当に良い作品を紹介する時、気負ってしまい作品の良さが伝えられているのか不安になる時があります。今回の作品は正にそれで、書き出しを迷った挙句結局このような書き出しになってしまったわけですが、まず始めに「良い映画であった」事だけを冒頭に宣言しておきます。

 なのはというシリーズは個人的には無印が一番好きで、それはTVシリーズだけで十分に私の好きな要素がしっかりと終わり迄ぶれることなく詰まっていたからです。それが映画になり思いは失われること無く寧ろ凝縮されて素晴らしい作品となりました。なのはという作品を進めるときに映画を進められるほどにです。(TVシリーズは何だかんだ言ってやはり長いですから薦める法も相当の覚悟が必要になるのです。)
 なので正直A'sの映画は楽しみにしながらもそれ程期待していた訳ではありませんでした。それは上記の理由であり、更に無印で好きと感じている成分がA'sの方が薄いと感じていたからです。勿論好きな部類の話ではあるのですが、それが何か冗長さや、無理に複雑化している事で薄まってしまっている気がしていたからです。

 上記の様な前置きをしつつも運良く舞台挨拶の回が取れた事で初日の鑑賞が叶ったのはとても嬉しく、少し忘れかけている部分も手伝って新鮮に見ることができたのはある意味幸運だったのかもしれません。

 今回の映画は必要な所は手を加え、不要なところは思いっきり切り捨て、所々変更はあるものの、本筋は変わらず、寧ろ作品が本来伝えたい部分だけを残し、それにより物語が分かりやすくスッキリと描かれていたという印象がします。
 それにより先程冒頭で語ったA'sの印象が映画で一変しました。「無印より薄い」と感じていた部分は同等に。冗長に、そして複雑に感じていた部分はスッキリと。結果TVシリーズよりも好きな作品に化けた事に感動し、寧ろ私の観たかった映像はコレだ!という勢いで終演までの約2時間半、涙が乾くことなく常に流れていました。これまで観たTVシリーズを再構成するというパターンの映画の中では少なくとも私の中では一番であると感じました。

 舞台挨拶では自宅からの距離だけで選んだ劇場だったのですが、そこは成るべくして成ったというべきか、ヴォルケンチームの舞台挨拶で、印象としてはとにかく柚木さんが暴走しまくっていたという感じでしょうかwそして事あるごとに一条さんにたしなめられていましたwあとはヴォルケンの総意として(ヴィータ除くw)「ヴィータはズルイ!!」というのが圧倒的意見でしたw私もやたらと美味しいなぁと思い観ていましたがw
 そして一番印象に残ったのは最後の挨拶でトリの植田佳奈さんが不意に感極まり大泣きしてしまったことです。私の中では劇中のなのはとフェイトに囲まれ、今はヴォルケンの皆は居ないから泣いていいんだよと言われ、すがり付く様に泣いていたはやてと重なりました。しかも作中では成し得なかった家族であるヴォルケンの前で見せた涙だからこそ何故かこちらも嬉しく、将である清水さんにすがり付くも止める事のできないできない涙に、全てを計り知れるわけでは有りませんがこの作品に込めた想いが垣間見えたように思いました。

 久しぶりに機会があれば2回以上見に行きたい!と心から思える映画でした。そしてこのスタッフなら私が最も残念だと思っているストライカーズも「なのは」として難得できる作品に化けるのではないか?という期待をしてしまいます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012.07.10

ココロコネクト ステップタイプ

 お気に入りの作品がTVアニメ化するのは嬉しい反面凄く怖い部分がある。嫌なのは、アニメ化された映像だけを観てつまらないと評価される事だ。なんだか原作並びに原作ファンの感性まで貶されているような気持になるからだ。

 嬉しい事は放送に合わせて新刊をリリースしてくれることが多い事。今回のコレもそれに当たるのだが、今回の巻は「ココロコネクト」シリーズを知らない人でもこの巻から読んで十分に楽しめるのではないかと思える程に今回の短編は良かった。(ただ、やはり知っていた方が面白いのでこれからこのシリーズを読んでみようという方にはやはり1巻から読むことを勧めたい。)特に文研部設立直後の5人それぞれの視点から書かれた1編目は原作をリアルタイムで追ってきた人達にとっても新鮮かつ復習的な意味も込めてよかったと思う。ましてやTVアニメが始まるに当たってこの話は重要に思える(ココロコネクトのファンにも、初見者にとっても)。

 今回読んで強く思ったことは、アニメにするには脚本以上に表情で語ることの出来る製作スタジオでないと原作ファンをうならせる事は出来ないだろうなということ。とにかく心理描写が多いこの作品。折角ビジュアルで表現できるメディアとなったからには全ての心理描写をモノローグで語るのは無粋である。ここらへんの演出はアニメに期待したいところだ。
 そして役者にとっても端的にいってとにかく難しいと思う。が、その分とても遣り甲斐のある作品ではないかということ。先程も言ったが、とにかく心理描写が多い作品である。ある意味、一石を投じてどの様に反応し、壊れていくかを神様視点・・・否、石ころ帽子をかぶって常に渦中で眺めているような作品である。とにかく特異な体験が次々と襲い掛かって来るので、自分のキャラだけでなく他のキャラをも理解し、自分のものにしておかないと違和感のあるものになり兼ねない。そして一番難しいと思われる人格入れ替わりの芝居が初っ端に来る事が役者にとっての試練であろう。観ている方もキャラが固まっていないこの時期に果たしてどれだけの完成度で表現されているのかは気になるところでもあるし、非常に怖いところでもある。

 っと、話が随分アニメへ脱線してしまったが、それだけの期待をアニメに出来るほどに良い短編だったと言うことだ。特に2編目の稲葉と伊織の器用過ぎる二人の不器用な友情秘話はキャストの方々がキャラを自分のものにした頃に是非ともアニメで見たい話である。3編目のトリプルデート話はそれぞれの個性を知っているとより楽しめる話なので、これは少なくとも修学旅行話を読んでから読むべきだとは思うが、これはこれで面白かったし、後半の青木の評価の伸び率は凄いものがある。それを改めて感じさせる話でもあった。そして問題の4編目。リア充とは何かを千尋と紫乃と藤島で探求するという物語なのだが、コレがまた非常に嫌な終わり方をする。物語は非常に爽快な終わり方をするのだが、ココロコネクトシリーズの最終章に向けた種蒔きがされるこの話。胸がザワザワする終わり方は何ともココロコネクトらしいのだが、気分的に良くない。コレまで以上の試練が待ち構えていると思うと今回の短編(短編では現象は起きない平和なエピソードが語られる)はお気楽でいられるのもここまでだと言われている気がしてどうにも落ち着かない。そういう意味では最終章の前に短編を挟んだのは私としても嬉しいし、何となくキャラへのご褒美のような気もしてくる。あとは読者としてはただ待つのみである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012.07.05

不思議絵師 蓮十 江戸異聞譚

 江戸時代の絵師の話で、歌川豊国や葛飾北斎等が活躍している中、主人公である蓮十は売り出し中の若手作家という立ち位置。江戸の雰囲気や時代背景もそこいらのいい加減な時代劇よりしっかりと書かれていて、「ほぅ」「なるほど」と思うこともしばしば。それでいて絵師であり物語の主人公である蓮十とその周りを取り囲む人々がコミカルに描かれており、時代物というよりはそういう世界設定のファンタジーを読んでいるような気分にさせられます。そういった要因の一つに蓮十の特技?性質と言い換えた方がいいでしょうか?描いた絵が紙を勝手に飛び出し動き喋りだすのです。そういった性質を持っているだけに苦労もあり、仕事用の絵には必ず綻びを作らないといけないといった具合です。
 そんな蓮十の絵に纏わる話を中心とした物語です。絵が中心とはいえ、動き出す絵が話の中心となる事はあまり無く、もしかしたらまた私の絵がと蓮十が心配する中、関わりのある人物の心の醜さがそれこそ形になって現れたかのような話が多く、ちょっと悲しい話が多いのですが、そこがまた魅力的でもある作風です。
 そんな中で物語を明るく持ち上げてくれるのが蓮十がお世話になっている版元の娘の小夜との恋もよう?といっても蓮十に好意を抱いている小夜と、小夜に憧れをもっている蓮十の一見上手くいきそうなのだけど、蓮十自身が自分の気持に気がついていないというあの歯痒いパターンが繰り広げられますwそれでも小夜の江戸っ子気質のおちゃぴいなところが読んでいてとてもほっこりとさせられます。時代小説であれ、現代小説であれ、女性のこういうところは何時の時代も魅力的ですね。さて、2巻へと続くのでしょうか?このお話は。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2012年6月 | トップページ | 2012年8月 »