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2012.12.23

クロジ第11回公演「かみさまのおかお」

 今回、「乙女企画クロジ」から「クロジ」へ劇団名を変更して初の公演となる第11回公演「かみさまのおかお」の昼の回を見てきました。場所は六本木俳優座劇場。観劇自体も久しぶりのことで、今年の4月に初めてクロジの公演を観劇した「異説 金瓶梅」以来となります。

 今回のお話は小さな村の中で生き神様に祀り上げられた女性とその家族や周りの人々のお話となっています。公演が始まり、スクリーンの役目も果たしている緞帳に母親が娘を生き神として祀ることを決める一節が映しだされ、その後その娘が30歳を超えた現代として芝居が幕を開けます。この冒頭の一節だけで感情的な「気持ち悪さ」を受けました。とてもいいと言える感情ではありませんが、冒頭の1演出だけで芝居に気持ちが持っていかれるという意味では非常に効果的な幕開けです。
 登場人物とその関係性、そしてそれを演じる方々はこの方達です。まず、生き神様である星子を演じる能登麻美子さん、その妹で、姉を生き神とする家族の環境に耐え切れず昔に家を出ていった弓香を演じるクロジのもう一人の主催でもある松崎亜希子さん。姉の始めた生き神様信仰を継続させるために尽力する星子と弓香の叔父である桐彦を演じるのは三原一太さん。その妻奈江子を演じるのは前回の10回公演でパワフルに潘金蓮を演じた木村はるかさん。その娘あまねを演じるのは藤田咲さん。(このあまね役はダブルキャストとなっており、もう一人のクロジの主催である福圓美里さんとなっています。)そして弓香が連れてきた芸術家を自称する彼氏藤田侑吾役に鈴木達央さん。村で一番の信者であり、あまねの学校の生徒会長である渋沢光を演じる中泰雅さん。の7人となる訳ですが、2時間という長い芝居の中で7人というのがとてもバランスが良く、それぞれの役割を担っていた様に思えます。

 簡単にあらすじを説明すると、弓香が彼氏を連れて帰郷するシーンから始まります。帰郷した先は小さな村の新興宗教をやっている叔父夫婦とその娘が暮らす家であり、その新興宗教の生き神こそが弓香の姉である星子です。星子は幼少の頃に母親から神様になることを命じられ、以降学校へ行く事もなく30歳を過ぎる今日まで一歩も外へ出ずに社で暮らし続けてきた女性で、「人」としては世間知らずという言葉では語り尽くせない程社会性が欠如した、否、そう育てられた結果、感情に赴くままに行動します。そのひとつに叔父との性交があり、それが悪い事とも引け目を感じる事とも一切思わず、求められたから、自分の存在意義を求め受け入れてきました。家族もそれを知りつつ黙認して過ごしてきという歪んだ家族環境の中に一石が投じられます。それが弓香が連れてきた彼氏である侑吾です。結果、星子に誘われるまま関係を持ってしまい、その事が村に知れ渡ることとなります。その事で暴動が起こり、桐彦は自分のこ事を完全に棚上げして星子を生き神から引きずり降ろし、新たに自分の娘であるあまねを生き神に据えようとします。社に鍵をかけられ父親に監禁される日々。対照的に用無しとされ突然自由と言う名の廃却を受けた星子。そこから一悶着二悶着あり物語は収束するのですが、この星子が用済みとされてからがこの物語の見所であり、見ている側にも色々な感情が渦巻く物語となっています。

 まず、自分のことを完全に棚上げした桐彦と騒ぎの原因となった侑吾。この物語の男共は本当に酷い。前回の金瓶梅もそうでしたが酷い男共の中でたくましく生きる女性というのがテーマになっているのではないかと思ってしまう程にです。
 能登さん演じる星子に関しては共同生活をおくらずに閉鎖された環境で育つとこうなるのかというのが半分恐怖となって感じられました。ただただ他人の為だけに祈り続けてきた女性が恐らく初めて自分の為に社へ戻してと桐彦ヘつぶやくシーん。この時桐彦に台詞はありませんが、「俺はこんなものを作ってしまったのか」あるいは「あまねをもしかしたらこんな風に・・」という思いが伝わってくる絶望感は恐ろしくもあり、この芝一番の見所だったのではないかと思います。この何と言うか世間知らずであるという自覚のない演技に違和感を感じさせないのは能登さんならではというか、とても良かったです。
 また、藤田咲さん演じるあまねは驚く程にセーラー服姿が似合っており、未だ現役で行ける!と思わせると同時に口の悪い台詞が実に自然というかw口の悪いところも含めて可愛らしいと思ってしまいましたw

 クロジのお芝居は結構感情を顕にする表現が多く、生々しい感情をぶつけ合うだけにそれ以外の芝居も凄く自然な会話のようで、芝居芝居していない所がとても好きです。
 舞台セットも今回で見るのは2作目ですが、前回の10回記念公演は特別としても、今回も面白い作りになっていて、居間が両サイドに二部屋と居間で挟むように在る中庭。そして高台にそびえる社で構成されているのですが、その社へ行く為には右側の居間から舞台袖へはけて行かなければならず、その見えない空間すらも舞台の空間として表現している所に面白さを感じました。例えば社から中庭へ駆けて行く際に一度舞台袖にはけてから居間を通って舞台袖に登場する訳ですが、その際の舞台裏での時間の作り方と演技などですね。

 冒頭に感じた気持ち悪さ、男共に感じた苛立ち、受け入れるままに現在まで至ってしまった星子への哀れみや、恐怖など、決して良い感情だけではない内容でしたが、裏を返せばその感情を抱かせるだけのシナリオや芝居であったということであり、最後はスッキリとした終わり方ではないにしろ芝居が終った後も色々と考えさせられる面白い芝居でした。次回公演も観れるならば観たいですね。

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