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2013.05.21

ドリーミー・ドリーマー

 読み始めて「何だ、またゲームの中に入っちゃう系か」と。しかもギャルゲーかと。少し辟易とした感もあったのですが、しばらく読み進めていくうちに何周もする終わりのないループから脱出したいという思いが感じられてきます。これがただのギャルゲー世界に入ったぜーひゃっほーい系なら直ぐに読むのを読めていたかもしれません。

 話の内容はこんな感じ。伝説の樹の下で女の子に告白されるシーンから始まり、ハッピーエンドを迎えると次のシーンは朝、妹に起こされるシーンへ。この世界は2週間を通して意中の女の子から告白されればまたスタートへという典型的なギャルゲーのフォーマットに則った世界。どういう訳かこの世界に囚われとなってしまったこの物語の主人公樹(いつき)だったが、半年近くもこの2週間が繰り返される頃にはヒロイン達のフラグを立てずにいかに平穏に過ごすか、という日々をおくっていた。そんなある日、見たことも無いキャラクターと曲がり角でぶつかり転倒する。その娘は転校生で、これは元の世界に返るためのきっかけにつながるかもしれないと行動を開始するが、最後の2週間目にその娘が樹の目の前で車に跳ねられて死んでしまう。次の2週間目では親友が下半身不随になる。何度か繰り返すうちにその娘の重大な秘密が明らかになるのだが・・・。

 絶望感を表現するのに時間の積み重ねこの作品でいうと繰り返した回数で表現するのですが、本来であれば繰り返しなどあるはずの無い日常で、回避できない彼女の死というイベントを何度も何度も繰り返すことによる精神的な負担などはうまく表現できていたのではないかと思います。
 最終的には現実世界へ帰還してからの戦いとなる訳ですが、ゲーム中に樹を支えてくれた妹であり友人達が、全てゲームの作者である現実の友人をモチーフにされていたことがわかり、その彼ら彼女らと向き合い最終的にゲームの作者であり、ゲームの中で救えずにもがき続けた彼女を現実の世界で救いハッピーエンド。ではなくスタートするという終わりはなかなかよい物でした。読み始めた時の感触とは随分違う終わりを迎えたことは好感触です。

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