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2013.12.13

箱庭図書館

 久しぶりの乙一です。たまたま一般書店に入り、前回読んだ「書店員の恋」を購入した時に一緒に購入したものです。
 短編集といった構成なのですが、それぞれのお話が全て同じ街を題材にして語られています。なので申し訳程度にそれぞれのお話の登場人物がクロスして出入りしてきますが、あくまでも「繋がりがある」と匂わせるだけなので描かれるのはほんの数行となります。そしてそれが物語に大きな意味を持つわけでもないので一冊の箱庭を作り出すための細工なのかなと。収録作品はこんな感じです。

・小説家のつくり方(原作:黄兎『蝶と街灯』)
・コンビニ日和!(原作:泰『コンビニ日和!』)
・青春絶縁体(原作:イナミツ『青春絶縁体』)
・ワンダーランド(原作:岡谷『鍵』)
・王国の旗(原作:怜人『王国の旗』)
・ホワイト・ステップ(書き下ろし、原作:たなつ『積雪メッセージ』)

 久しぶりに読みましたが相変わらず登場人物が病み(闇)を抱えてますね(^^;初めて乙一氏の作品を読んだのは「夏と花火と私の死体」でした。当時それなりの衝撃を受けたものです。その後数冊を読みますが、全体的に私の好む感覚と異なる事から離れて行った訳ですが、こうして久しぶりに読んでみた第一印象は変わらないなぁ(^^;でした。しかし、「王国の旗」に差し掛かり、何ともメルヘンチックな書き口でこんな作品も書くんだなと。
 そして「ホワイト・ステップ」一発でやられました。むちゃくちゃ好みの作品です。年越しで降り積もった雪が平行世界の境界となるという設定のお話で、かいつまんで導入部分の説明をすると、ある女性が公園の新雪に続く足跡を見つけます。そのまま追っていくと公演のベンチに辿り着きますが足跡はそこで途絶えています。ベンチを一周してみますが結局わからずじまいで女性はそのまま立ち去ります。一方、男性が公園のベンチで座っています。新雪を踏み鳴らす音に気づき周りを見渡しますが誰も見当たらない。気のせいだと再び携帯に注意を向け、しばし。さてと立ち上がったところ誰も近づいた気配がなかったのに自分が座っていたベンチを一周している足跡を見つけて驚愕します。
 といった導入なのですが、要するに女性と男性のいる世界はかなり近しい平行世界で、降り積もった雪だけが二つの世界に交わって影響を受けるというものです。このあとこの女性と男性は再び接近し、雪を使ったコミュニケーションを取り始めるのですが、この身近なシチュエーションでのひょっとしたらあるかもしてないと思わせる不思議体験。この設定に久しぶりに胸を躍らせました。昔からこういうもしかしたら自分にも的な物語が好きで、古いところではぴえろの魔法少女シリーズで特別ではない女の子が偶然魔法の住人と接触してしばらく力を借りるとか、そういったものです。
 さらにこの物語の凄いところは雪を題材にすることで制限時間が生まれる点です。更にこの現象は主人公である二人の男女間だけに起こっている現象ではないという事。(ただ、気が付いているのがこの二人というだけ)その事でコミニュケーションする為の雪が減っていきます。そして女性側の事情が絡み合って得も言われぬ切なさを生むのです。
 短編なので少しの時間で読めると思いますので、是非読んで頂きたい作品です。

 あとがきを読むと何とこれらの作品は「オツイチ小説再生工場」なる企画で生まれたものらしく、ボツ扱いの一般作品を基に加筆修正したものなのだそうです。「王国の旗」で感じた意外性はまさにこれだったのですね。
 しかしこの企画、プロの手によって生まれ変わるのはそれはそれでいいのですが、アイデアは悪くないけど技術が無いって直球で言われてますよね(^^;結構キツイ企画だなと。

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